SFC琴坂氏インタビュー「国・企業・個人の関係の変化」

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国や産業といった領域を超えて、どんどん活躍していくスタートアップ。その背景にある大きな時代の変化を慶應義塾大学総合政策学部の琴坂将広氏に、宮地・鈴木が聞いた。(以下、敬称略)

Part1 国・企業・個人の関係の変化

<国・企業・個人の「デカップリング」>

鈴木:

今の世の中で起こっている本質的変化は何か?

琴坂:

国・企業・個人の「デカップリング」が起きている。

かつては、国ごとの国家戦略に従い企業活動が行われ、その企業で個人が働くというように国・企業・個人は一体(=カップリング)となって活動していた。それが今、メディアがグローバルに到達することによるテイストの統合よってグローバルな市場統合がおき、また企業が世界展開する中で生産-供給側の方も世界的に繋がってきている。

グローバルな市場統合と生産統合は、企業や人に自由に移動する選択肢を与える。(国は移動できない。あくまで国は日本だったら日本しかない。)。

極論を言えば企業は別に日本で会社経営をする必要がないし、個人は日本人だからといって日本で起業する必要もない。日本においては、日本で起業したほうが良いので多くの日本人が国内で起業するが、中東ではアゼルバイジャンで起業するよりロンドンで起業したほうが良いし、インドで飲食店をやるなら金を借りてロンドンでカレー屋をやったほうがはるかに儲かる。企業としても個人としても国という境目を超えて活動することが一般的となってきている。

また技術の爆発的な進化も、国・企業・個人のデカップリングを増長する。このことは、段階的に国際化をする、大きな組織でないと国際化できないとう世界が終わったということを意味する。昔は国を代表する企業が日本の名前を背負ってアメリカ市場に展開していっていたが、今は個人が個人の意思で、自分の力でシリコンバレーで自分を試すようなことができるし、10人か20人でも世界中のappleストアで1,2位をとっていくことができる世界になった。

<国や組織の力に頼る時代から個人で活動できる時代へ、選択の自由>

こうした変化を背景として、生き方のモデル、もしくは活躍するときに必要な要素が変わったことの認識が大切になる。

昔は、日本という体制の中の、がっちりとした企業に入ったほうが自分の能力を使って社会にインパクトをもたらすことがたやすかったかもしれない。重厚長大産業に入る、大企業に入る、官僚組織に入ることで、日本という国の力を使って、もしくは張り巡らされた経団連や経済同友会の力を使って活躍することができただろう。

しかしながら、今はそういったものを使わなくても個人が自分たちのやりたいこと、成し遂げたいことのビジョンを背景にしてリソースを市場に調達して活躍できる可能性がある。現代では、スタートアップを起こすような起業家精神と国際経営という2つの概念がどのような個人に対しても大きな意味を持ち始めている。

昔は企業を立ち上げたあとには、段階的に成長を実現し、日本で地盤が作られてようやく海外展開という経緯が一般的であった。しかし現代では創業直後から世界中に議場展開を広げる方法が一般的になりつつある。個人にとっても世界が極めて身近になった。

かっては、母国から海外に出ることは大きな困難を伴っていた。例えば、1970年代初頭であれば、欧州に行く航空券は、現在価値でいえば百万円以上するプレミアチケットであった。外貨の持ち出し規制もあり、パスポートを持つことも一般的ではなかった。海外というのは一般の個人にとっては夢の世界だっただろう。

しかし今は5万円も払えば世界に行けるため、個人の生き方もそれに応じて変わりつつある。たとえ小さな企業であってもそれが10年以内に世界を変えるような会社に成長する可能性がある、こういう時代になったからこそ、グローバルとスタートアップが非常に魅力的な選択肢として価値がでてくる。大企業と戦える道理が格段に増えてきた。(つづく

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琴坂将大氏プロフィール

慶應義塾大学環境情報学部卒業。在学時、小売・ITの領域において3社を起業、4年間にわたり経営に携わる。大学卒業後、2004年からマッキンゼー・アンド・カンパニーの東京およびフランクフルト支社に在籍。北欧、西欧、中東、アジアの9ヵ国で新規事業、経営戦略策定のプロジェクトに関わる。多様な事業領域における国際経営の知見を広め、世界60ヵ国・200都市以上を訪れた。2008年に同社退職後、英オックスフォード大学大学院経営学研究科に進学、2009年に優等修士号(経営研究)を取得。在籍中は、非常勤のコンサルティングに関わる。ヨットセーリングの大学代表に選出されるなど、研究・教育以外にも精力的に活動。2013年に博士号(経営学)を取得。立命館大学経営学部准教授を経て、慶應義塾大学総合政策学部准教授。近著に「領域を超える経営学

<鈴木の所感>なんとなく感じていることを言語化し、明確に示される能力が尋常でなく高いという印象でした。大変な時代である反面、チャンスでもある時代。その中で琴坂氏はどのように社会を見ているのか、次回は「産業によって異なるグローバル戦略:統合化と適合化」です。お楽しみに。

その琴坂氏と、設立2年で上場した日本発の神経再生技術での治療に挑むサンバイオ森社長、設立6年で上場・グローバルで次々とヒットを飛ばすアカツキ塩田社長をゲストにベンチャー国際化のスゝメというイベントを開催します。ご興味のある方はお申し込みください。