医療アプリ開発チームがコンテストの賞よりも大事にしたこと

Pocket

前回のKBC賞受賞者インタビューが好評だったので、KBC入賞者インタビューをシリーズ化します。

スライド1

今回は、Salesforce.com賞と弥生賞というスポンサー賞2つを受賞したPatient Storyチームの中西均氏にインタビューを行った。プラン名は、『がん患者の方に向けた症状の記録共有サービス』です。副作用情報を共有して、医療の質を高めるサービスで、最近話題になるヘルスケア関連サービスとして、審査員の間でも評価が高かったプランです。

鈴木:なぜKBCに参加したのですか?
中西:KBCに参加した理由は、KBC代表の仲川英歩さんに紹介して頂いたことです。上村さん(注:KBC発表時のリーダー、現在は就職され、中西さん中心での活動となっている)と英歩さんは8/23に行われた Applicareに出場していた関係で知り合いで、そのイベント後の友人関係から10/6にKBCのことを伝え聞きました。

僕自身は、このチームに参加したのがApplicare後の8/25からで、KBC memberと直接知り合う関係ではありませんでした。ただ一方で、同時に開かれている東大entrepreneur道場を修了され、また起業された先輩のもとで大学初めより学ばせて頂いる経験から、個人として entrepreneurship(起業家精神)を持った学生が集まるKBCにとても興味を持っていました。

当初『ideaのseedはあり、技術面も多少の知識を持っていて、一歩踏み出せた。それでは具体的にbusinessを始めるにはどうすればよいか聞きたい』という思いを持っていまし た。early adoptorをどうするか、金銭面でどうするか、を漠然と構想するも真実味を帯びておらず、今となって振り返ってみると、本当に一歩でしかなく、それは千里の道のうちの一歩でした。

鈴木:苦労した点はどのような点ですか?
中西:苦労した点はもう数え切れないほどあるので、言い尽せません(笑) 単純にサービス面だけで話をすると、seedとなるideaでのサービス に参加するuserは誰で、それぞれどのようなメリットを持つのかだけでなく、そもそもそこに本当に解決すべき問題があって、その サービスは適切なアプローチなのか、という問題策定の原点に何度も立ち直りました。

『がん患者の方に向けた症状の記録共有サービス』という形になってからも、それでは、患者のメリットはどんなものがあるか。そのサービスに関わる家族、医師、製薬企業、薬局、 医療メーカー、保険会社、そして国の立場はどうなるかという広い視点でのものと、各業界に関わる規制はどうなるか、それぞれが抱 える真の問題と我々のサービスが提供できる価値はどこまでであるかという個々の視点でのものなど、考える点は今であっても尽きないです。その上で、businessとしての成長model、収益model、実際に他社との競合分析といったものは困難を極めるものでした。とりわけて規制に関する問題と市場で簡単には決定できないdataとしての価値と活用からbusiness modelを立てる点が一番の苦労した点でした。

鈴木:KBCではworkshopを数回開催しましたが、それらは活用できましたか?
中西:そうですね。宮地さんが担当されたworkshopで行われた、『ビジネスモデルキャンパスを使い倒す』でのコスト構造を検討する話、などは古くから行われている伝統的手法を見る講座を学びました。ここでは特にモデルとして先輩企業であるAISSY(筆者の会社だ!)さんの例を見せていただいていたのですが、実際にbusinessを始めたときにどういう変遷を経て、提供する価値を軌道修正してやってきた話などがとても参考になりました。

またメガソーラーの目崎さんが担当された会では、サービスを考える上で推定personaの行動分析を行うことで、実際にどういう調査をし、問題があるかを策定・分析することを行い、モデルとしての1つの指針を得ました。これら workshopでの活動と発表で頂いたfeedbackを参考にしてideaを変更しては、ventureを経営されている先輩方に個別でMTGしてもらう 機会を得ました。ドリコスの大久保さん、(interviewして頂いている)AISSYの鈴木隆一さんには、どのようにマネタイズするか、とりわけ early adoptorを入れる際にどのようにするか、議論させてもらい、Salesforce.comの北原裕司さんには、規制面、セキュリティ面、個 人情報面といった実際にサービスをする上で最も重要な部分についてアドバイスを頂きました。

さてこれらを念頭に意識を張り巡らせたもとで、『最適な形でサービスを開発する』のが自分のtaskなので、実際にサービス開発をするところで技術はどうするか、databaseをどう組むか、副作用項目をどのように組むか、などなどが本当に苦労をしたところなのですが、長くなるので割愛します(残念!)。 これらを経験して思うことは、回り道できるところは、全て回ったんじゃないかというくらい、まっすぐにこれていない。ただ昨日解決できなかった問題に対して確実に考えを満たす。そして新しく次の問題設定を行い、解決を試みるという繰り返しは、確かな一歩であり、 entrepreneurの醍醐味だと感じました。

鈴木:最終審査の時はどのような気持ちでしたか?
中西:実際のところ発表の間も、終わってからも、賞については全く意識していませんでした。一番に思ったのは、患者さんに早く使っていただきたい気持ちで早まりました。そのためにも、事業化するにはどうすればよいかと、今後の戦略をどうするか、しか考えていませんでした。課題としていたearly adaptor をどう解決するか、企業として持続できるかとして意見は出るものの、実際に金銭面では企業と関係をあまり作れていない、サービスを利用する患者団体とは患者本人にテストユーザとして使用してもらうほどの緊密なやり取りが出来ていない、というところで、サービスについても完全にリリースできる段階ではありませんでした。機能面について実際にやってみてA/B testするしかない、と結論付けていました。

最終審査・表彰については、純粋に嬉しかったです。最後残った5チーム間では何度も交流しあっていた仲だったので、発表という1 つの節目を終えられたことがまず充足した気持ちになりました。とりわけ『LGBTのための就活支援サイト、Job Rainbow』の星くん、五十嵐さんのチーム(次回インタビュー予定!)は、同じ社会的問題に対して、適切な解決方法を技術面、そして事業面で完成させていたので、断トツで素晴らしかった。同世代の学生たちが一生懸命に考えぬいてそれぞれの方法で完成した発表を聞けるのが、とても刺激になって大変身に沁みたのが素直な感想です。

鈴木:最後にKBCで役立った点があればまとめて教えてください。
中西:KBCで特に学んだことは、失敗(曲道)を恐れないことと、様々なバックグラウンドを持つ学生、社会人に色々な価値観、意見を素直に聞くことの大切さでした。そして、一番は熱意をもったチームでの活動。改めてKBCのメンバー、メンターとしてついてくださっ た先輩方、Patient Story チームに感謝を述べて締めくくりたいと思います。

本プランはapplicareの時点でもある程度考えられていたプランだったのだが、さらにブラッシュアップをかけるという意味で役立った点もあったようです。筆者自身もメンタリングを担当した案件でしたが、問題の着眼点としては面白く、ただその解決策をどのように図っていくかでまだ課題があると感じました。インタビュー中にも出てきたJob Rainbowのインタビューも近日公開予定だが、また違った角度から語ってくれるに違いありません。他のチームからも優れた点を学ぶ視点を持っているのは、非常によいことだと思いました。

さて、実際に起業した人たちがどのように問題に取り組み。解決していったかを聞きたくなってきましたか?4/25にクモ糸のスパイバー・腸内デザインのメタジェン・再生医療のメトセラという3社の経営者を呼んだイベントを行う予定です。実際に起業し経営していく上でどのような苦労・克服法があるのか、聞いてみたいと思います。基調講演は先端生命科学研究所の富田所長で、続々とイノベーションを生み出す”鶴岡流イノベーション”について語ってもらいます。筆者もコーディネーターとしてディスカッションに参加予定なので、ご興味ある方はこちらの申し込みフォームからぜひお申し込みください。

起業やメンター活動に興味のある方はぜひメンター三田会にぜひお問い合わせください。(筆者は現在、メンター三田会の中で事務局を担当している)案件に対して客観的なアドバイスができるメンターを揃えております。