元バイトAKBが慶應ビジネスコンテストでKBC賞を取るまでの闘い

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仲川氏が代表を務めた2015年KBCでKBC賞を受賞したTeam Mamiの川口真実氏(慶大2年、左)と井上ひかる氏(慶大1年、右)、佐々木俊樹氏(東京農工大4年、下)に、今回のKBC賞を受賞するまでを振り返ってもらった。川口氏は昔バイトAKBだったという異色の経歴を持つ。

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Team Mamiのプランは「うつ病予防のための光量測定ウェラブルデバイスの開発」であった。

鈴木:そもそもどうしてKBCに出ようと思ったのですか?
川口:KBCには大学1年生のときもエントリーしたんですけど、結果は落選。敗者復活戦にも出場しましたが、勝ち上がれず。同学年の別の子が合格しました。私は事業内容、プレゼン、どれ一つをとってもその子に敵わなかった。「自分は何もできない」ということを痛感して、悔しくて帰り道大泣きました。でも、泣いてるだけじゃ、だめだな。今度は事業内容もプレゼンも「神」になって、KBCで賞を取りたい!と思って、そこから、事業立案や経営戦略の授業をとったり、AKB48さんでバイトをしてプレゼン能力、パフォーマンス能力を磨いたりしました。バイトAKBの採用面接では「バイトAKBを糧にして将来は起業家になりたい。」って言って合格しました。今度は自分の事業内容・プランにもプレゼンにも自信を持てたので、絶対にリベンジしたいと思って出場をしました。
佐々木:Wantedlyでエンジニア募集をしていて医療系のところを探していたところ、Applicareを見つけ、応募したところがきっかけです。コンテストの出場を考えていたというよりは、単純にインターンを探していました。高専では研究室で何かを作ることができましたが、大学に編入しても講義しかなく、物足りなさを感じていたので、何かを作りたいなと思っていました。 Applicareに参加してオーディエンス賞を取り、チームで今後どうしようか話し合った結果、「もっとプロダクトをよくしよう」ということで、KBCに参加しました。また、Applicareでのオーディエンス賞に満足していなかったから、というのもあります。それほど、自分たちのアイディアに自信がありました。

鈴木:井上さんは、なぜこのチームに入ったのですか?
井上:きっかけは、中学・高校・大学で一年先輩である川口真実さんからお誘い頂いたことでした。真実先輩が参加されていたビジネスコンテストAppliCareでのお話を少し伺ったときから気になっていたので、是非一緒に活動したいと思いました。
鈴木:では、プランの内容ではなくて、真実先輩から誘われたからってことなんだね。
井上:それもありますが、うつ病という、いつ誰がなってもおかしくない病に危機感を抱いていた事とそれに関連する論文を多く読むことは自分の力になると考えたからです!

鈴木:どういうところで苦労しましたか?
佐々木:ハードを作成するための環境を構築することに、まず苦労しました。パソコンがあればソフトは開発できるのに対して、抵抗やセンサなどが必要となるハードの作成は時間とお金がものすごくかかります。高専の研究室では、はんだこてや素子、パソコンまで何でも揃っていたが、その環境を一から作るために秋葉原に通っては作り、通っては作りを繰り返したのが大変で、ほかのチームに比べてスタート地点にも立ってない気がしました。もちろんコンテストの場合、物を実際に作るのも地獄。期限があり、いつも時間に追われるので、寝ずに作ったり、借りてる部屋のベランダではんだしたりと、無我夢中でやっていました。睡眠に問題を抱えている方のデバイスとなっているが、当時はうつ再発予防デバイスをつくりながら、自分たちがうつになりそうと言いながらやっていました。次に、コンテストに参加する前の私は、エンジニアは開発、デザイナーがデザイン、というような分業制でのチームをイメージしていたが、チームで活動していくにつれて、【解決したい課題】という根本部分から考えていくことが重要だと気付きました。そこで、エンジニアにもかかわらず実際に患者会に参加して患者の話を聞いたり、教授にアポを取って話を聞きに行って、「どうしたら自分たちのプロダクトが本当に必要だと思ってくれるのか。どうしたら使ってくれるのか。」それを考えるのが大変でした。話を聞いていくにつれて、このままではダメだ。こうした方がいい。となって、何回もピボットしたのも開発側からすると、大変な点でした。大変だが、モノづくり・価値づくりでは、一番大事な点だとも今となっては思います。 学校との両立が厳しく、なかなか参加できないメンバーも出てきて、一時期、2人(川口と佐々木)だけでやってたこともありました。必要な人材が揃わず、活動できる人数も少ない中でのチーム運用は苦労しました。また、リーダーが時々突拍子もないことを言い始めたりするので、ミーティングでのかじ取りも初期は大変でした。
井上:ビジネスプランを構築するまでが私の中では最も大変でした。論文や様々な教授・専門家・患者さんの方々にお話を聞いた経験から、重要なデバイスになり得ると思えても、ビジネスプランによっては全然機能しなくなるという事がとても恐怖に感じました。
鈴木:逆に嬉しかったことはありますか?
井上:一番辛い本番一週間前辺りが私の誕生日だったのですが、真実先輩がサプライズしてくれました!お陰様で楽しく過ごせました。
川口:オフィスで、ケーキと、プレゼントと、飾り付けをしました。「一週間前なんだから、そんなことしてないで、プレゼンの準備しなよ!」って思う人もいるかもしれないけど、私は違う。ビジコンではチーム内の円滑なコミュニケーションが大切で、こういったイベントを大切にすることでチーム内の雰囲気をよくして、結果、良いプレゼンにつながるんです。チームメンバー第一です。
鈴木:そういうコミュニケーションも大事ですね
井上:個人としての克服法は、人にお話を伺った事です。特に専属メンターの上田さんにはとても丁寧にアドバイスいただきました。
鈴木:メンターが役立っていて、よかったです。
井上:私は途中参加だったのですが、合宿では沢山に学ばせて頂きました。一泊二日でビジネスのためだけの時間を過ごせた事は、貴重でしたし、モチベーションの向上に繋がりました。同じ部屋にメンターさんもいらっしゃってビジネスについて和気あいあいと話せ、ビジネスを構想する事を楽しいと思えました。
鈴木:メンターもより役立つアドバイスができるように励みます
川口:あと、メンターさんがORFでプレゼンする機会を作ってくださったことがよかったです。生のお客様がいる場所でプレゼンをすることは、一番の練習になります。お客様が目線をくれたり、手を振ってくれたときに、何かしらの形で返答することをアイドル業界の言葉で「レス」というのですが、バイトAKBのときに「レス」をすることで、お客様が私のことを覚えてくれた経験があったので、 ORFでのプレゼンでは「レス」を用いたプレゼンを実施しました。それが功を奏したのか、プレゼン後にお客様が待っていてくださって、私たちのプランに対する意見を言ってくださったり、有益な情報を教えてくれたりしました。それだけでなく、この日は渡邉康太郎 (Takram)さんがアドバイスをしてくださるというビッグな特典が付いていたんです。渡邊さんにはユーザー中心の十分なリサーチの上でものをつくることが大切だということを丁寧に教えていただきました。これは基本的なことだと思うのですが、チームメンバーだけで進めていると、忘れてしまうこともあります。外部の方の意見のおかげで、当たり前なことが大事だということを気付かされました。
井上:ORFは私もありがたかったです。ORFで出会ったうつ病を克服した方とは今でもLINEをしています。
鈴木:プランにするのは大変だったけどメンターのアドバイスがきちんとワークして、ブラッシュアップできた、ということですね。
佐々木:ただ、自分(達)を信じることも大事だと思います。様々なメンターの方に自分たちのアイディアを相談すると、言ってくれることがそれぞれ全く別。私たちは何でも素直に聞いちゃう人たちだったので、「どうしよう!?」ってなり、そこで立ち止まることが多かったです。メンターの方の意見はとても参考になることが多いですが、彼らもそれで成功するかは分かってないことを忘れてはいけないと思います。KBC期間中はそれで悩むことが多かったですが、それに気づいてから、自分たちの軸を曲げずにしっかり考えることができるようになりました。
鈴木:それは重要な指摘ですね。助言を取捨選択する力は社会人になっても役立ちます。
さて、そういう中で、最終審査になったわけですが、他のチームの発表も聞きながら、どういうことを考えていましたか?

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川口:絶対優勝する!
井上:私もです
鈴木:ほーいいね!
川口:プレゼンはすっごく工夫しました。この1年間、プレゼンを得意にするため参考にしようと、いろんな人のプレゼンを見てきました。孫正義さんや平尾丈さんなど起業家として成功している方々は、難しい事業をされていても、私でもすごくすっきり理解できたんです。たとえ話をいれていたり、大事なことは繰り返し話していたり、しているのがポイントだと思いました。
一方で学生が出場する他のビジコンも聞きに行って、一部の方は、すごく優秀でスキルもありそうなのに、私は何がすごいのかわからなかったり、ストーリーの流れがとんでいるので、途中ではてなマークが浮かんでしまって、もうその後の話は何も頭に入ってこなかったりして。そういう気づきを反映させて、作りました。
鈴木:僕も現場で見てましたが、プレゼンはわかりやすかったです
川口:プレゼンの中で最後まで、チーム内で議論になったのは動画をいれるか否かでした。
井上:結局、動画を緊急で入れることにしたんですけど、その決め手となったのはオーディエンスでした。動画をいれると、うつ病の発症メカニズムや商品の仕組みなどの説明が時間の関係でできなくなってしまいます。でも、真実先輩が「昨年落選したけど、KBCの決勝は見に行って、さまざまな分野出身の審査員・オーディエンスの方がいた」と仰っていたのを思い出して、科学的な説明を話すよりも、自分がプロダクトを使ったらどうなるかなとオーディエンスの人に想像してほしかったからいれるように頼みました!
鈴木:なるほど。チームメンバーとして井上さんと組んでよかったですね!
川口:ひかるちゃんは左脳的で私は右脳的なんです。今の話でも、私一人だけだったら、動画をいれた方がいい!と直感で思ってはいたけど、なぜ動画がいいかをチームメンバーに説得することができなかったと思います。お互い得意とすることが違うんですが、ひかるちゃんと相性がすごくいいなって感じてるんです。きっと二人とも、人を楽しませたい!というエンターテイナー精神が人格形成の根本にあるんでしょう。
井上:人を楽しませるのは好きです!
川口:マインドが一緒で、得意分野が違う。ひかるちゃんが「teamMAMIのメンバーになります!」って言ってくれたときははホントに嬉しかったです。
鈴木:僕は2人ともよく知っていますが、フィーリングの川口さんとロジカルな井上さんはいいコンビだと思います。根本は一緒だけど、アプローチが違う。そこに技術に強い佐々木君が加わって、チーム作りはうまくいったと思いますね。
川口:フィーリングですか(笑)。佐々木君とはアプリケアからずっと一緒にやってきたので、私の言いたいことを的確に理解してくれたし、率直なコメントをくれました。技術的な面は彼が全て担当してくれて、いつも、すぐにプロトタイプに落とし込んでくれたりと、彼がいなかったら、ビジコンも途中で辞退していたかもしれません。
鈴木:佐々木君は舵取りに苦労したようですが(笑)さて、最終審査に話を戻して、KBC賞をとったとき相当感動していたように見えたのですが、どんな気持ちでしたか?
川口:2年越しの目標・憧れだったKBCで結果を出せたので、よかったーという気持ちが大きかったです。また、自分だけでなくTeamでそれぞれの得意分野を活かすことができたが故のプレゼンで、そのプレゼンを評価してもらえたので,とても嬉しかったです。
井上:本当に嬉しかったです、初めて参加したミーティングの時からシリコンバレーに行こうと、常に話していた印象があるので、安心しました。
鈴木:正直なところ、自信はありましたか?あの発表の瞬間。先に発表される、スポンサー各賞は1つも取れず、落胆と焦りがあるように見えました。(スポンサー各賞4つ、三田会賞2つ、KBC賞の順番で発表)
川口:他のチームがたくさん名前を呼ばれていたので、またそのチームが呼ばれるかなって思っちゃいました。
井上:私はKBC賞に関しては少しありました。全力を尽くしてこれたことと、シリコンバレーへの想いが私たちteam MAMIが一番強いということを真実先輩のプレゼンでしっかり示せたと思ったので。
佐々木:ステージに並びながら、「何か賞は取れるだろう」と思っていました。しかし、なかなか呼ばれなかったので、3組くらい呼ばれたところで、今回は「賞なしなんだな」と諦め、「賞なしで終わったら、これからどうしよう」と考えながらステージに立っていました。どのチームもそうだと思いますが、KBC賞を狙っていたので、ここまで呼ばれないということは、KBC賞の可能性はなくなったのだと思っていました。他のチームに比べて、プロダクトが弱く、アイディアベースだったため、その可能性は十分あると感じていました。ハードの作成に取り組んでいることが評価され【情報産業三田会賞】をいただきましたが、さすがにKBC賞(自分の中では優勝)は無理だろうと思っていました。 KBC賞の発表の時、期待した分だけショックを受けると思って、「うちらは絶対にない。KBC賞は○○だな。」と思うようにしていました。呼ばれると予測してなかったのでKBC賞の発表後の数秒間は「呼ばれてしまった」と思ってました。ついでに言うと、その後もずっと家に帰るまで、喜びというよりは「呼ばれてしまった。どうしよう」と思ってました。ただ、頑張ってきたことが評価されたんだと、涙ぐみましたが、すっきりと喜ぶことはできませんでした。
鈴木:まあ、僅差だったと思うし、完成度は他のチームもなかなかでしたからね。

KBC賞を受賞した彼ら・彼女らがその後、どうなっていくのか、今後が楽しみです。正直なところ、プランの完成度だけで見ると個人的には他のチームの方が勝っていたと思いますが、ひたむきさと伸び率で、審査員の心を打ち、KBC賞を獲得してシリコンバレー研修を勝ち取りました。

今回の話を聞く限り、KBCのメンター制度はある程度ワークしたようです。起業やメンター活動に興味のある方はぜひメンター三田会にぜひお問い合わせください。(筆者は現在、メンター三田会の中で事務局を担当している)案件に対して客観的なアドバイスができるメンターを揃えております。

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